楠町南五味塚の鯨船は地区に古くから伝わる祭礼行事であり、毎年10月の体育の日の前日と前々日の2日間、地区内を練り歩きます。
真紅の胴に金箔の細工が鮮やかな船の名前は「龍神丸(りゅうじんまる)」。
横幕に施された2匹の竜は左側が昇り竜、右側が下り竜です。
屋根の上のシャチホコは、口を閉じた前と玉をくわえた後ろで「阿吽(あうん)」を表現しています。
ひときわ大きな鯨は親鯨、かぶるのは若い衆と呼ばれる人たちです。後ろに続くのは子鯨で小学生、中学生がかぶります。
ピンクのリボンを付けているのは「姫鯨」で女子中学生が担当します。以前は女性の参加が認められていませんでしたが、平成7年から姫鯨として女性が参加するようになりました。
南楠の鯨船は三重まつり博や国民文化祭にも参加し、年々盛んになっています。
地区で行われる練り行事は一大イベントとして定着し、祭りの2日間はそのために帰省する人などで大いに賑わい、クライマックスの入船(いりぶね)では、南御見束神社の境内が人で埋まるほどの盛り上がりを見せています。


【参考資料】 学習資料(R1.12更新).pdf   鯨突きの流れ(R1.12更新).pdf

用語解説
出船(でふね) 
初日、最初の練り。南御見束(みなみごみづか)神社を出発します。
入船(いりぶね)
2日目、最後の練り。飾りを外して裸船で練ります。
練りの後に船を七回半回し、船首を伊勢神宮に向けます。
「謝運(しゃうん)謝運と拍手送(うっておくれ)、祝うて謝運の、御社参(おっしゃっさん)の謝運と勢伊」と全員で唄い万歳三唱します。
・・これは、かつて豊漁の年に地域を代表して伊勢神宮に参拝する者の決定を祝い合唱した網元のならわし・・ということです。
○○を突く   
1回の練りのことを地元ではこう言います。
例「踊り子の家を突く」
ヤサモサ   
練りの途中、船を左右に揺らす動作。
気合に比例して回数が増えます。
ちなみに入船では11回程度。
みよし   
船の前の取り外せる部分。
船の前の方を担当する若い衆のことも“みよし”といいます。
艫(とも)   
船の後ろ部分。
船の後ろを担当する若い衆のことも“とも”といいます。
腹(はら)   
船の真中部分。
もちろんここを担当する若い衆のことは“はら”といいます。
金縄(きんなわ) 
船の先端の金糸の縄。
金縄を守る若い衆を“金縄持ち”といいます。
鯱(しゃち) 
その名のとおり屋形の上の鯱です。
前は口を閉じ、後ろは玉をくわえて「阿吽(あうん)」を表現しているということです。
梵天(ぼんてん) 
金糸で「龍神丸」と刺繍した赤いのぼり。
これから“突く”ところを示します。
ちなみに副会長クラスの偉い人でないとぼんてん持ちはできません。
さんぱらい 
船を担当する若い衆の指導役。
船がうまく動かないと“さんぱらい。しっかりせえ!”と叱られます。
踊り子 
船の上で踊る練りの主役。
通常、小学5〜6年生2人です。
櫓(ろ)漕ぎ 船の腹で櫓を漕ぐ幼稚園児4人。
年長児を基本として半日交代です。
足持ち 船の上で踊り子をささえる若い衆。
唄い 前唄、後唄を高い声で張り上げる保存会の長老。鯨船を知り尽くした男たちです。
太鼓たたき その名のとおり船の上で太鼓をたたく若い衆。
普通は太鼓に合わせて歌を唄うものですが、南楠では“唄い”が最年長なので、太鼓が歌に合わせます。伸ばすも切るも“唄い”次第・・なのです。
鯨 
2人づつ交代で操作します。
丸目がメスでつり目がオス。
子鯨 
小学4年生から中学生男子。
1ぱい6人ぐらいで担当します。
姫鯨 
女子中学生が担当する鯨で、女性が参加できる唯一の部門です。
背中にリボンを付けています。
手覆(ておい)
手の甲から腕にかけて着ける黒いやつ。
「手っ甲(てっこう)」ともいいます。
腰さげ
腰にぶら下げる飾り。
魔除け、とかコケた場合のクッション代わりとか言われます。
船につく若い衆は船側と反対側の腰に下げるのがならわし。




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